老舗料理屋「京四季」の創業者 平山昭一さんは、父の古くからの友人でした。私が16歳の時、「料亭の庭に置く、カエルを作ってくれへんか。」と父ではなく、直接私にお声がかかりました。
「プロがつくった、カエルカエルしてるカエルはいらんのや。君やったら、どんなカエルを作る?可愛らしいカエルつくってや。」と。
登り窯で、焼き締めで、石みたいなカエルをお持ちしたら、とても高い評価をいただきました。「どこの陶芸家の所に行っても、滅多に買わない人が、3,000円出さはった。よっぽど気に入らはったんやなぁ。」と噂になったほど。
器を意識し始めたのは、その頃からです。
家業が家業ですから、自然に、どういうお茶碗が良くて、どういうお茶碗が良くないか、目では、わかるようになっていました。でも、手がついてこないのです。一見、とても上手にできていても、持つと、重たい。中々手持ち良くできない。どうしても。当然のことです。
悔しい。いいお茶碗をつくりたい。子どもの頃からいつも周りにあったお茶碗を、初めて強く意識したのです。
そんな私に平山さんが声をかけてくださいました。「お花を習いに行きなさい。おじいさんの先生やけれど、とてもいい先生がいらっしゃるから紹介してあげよう。」そして、私は、加藤淡斎先生と出会うことになります。
3,000円で買っていただいたカエルは、平山さんが亡くなり、代が代わった今も、お店に置いていただいています。
平山さんの、10代の私に対する、大きな愛を、今、改めて、感じるのです。
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